恐怖のツボ
SEA MONSTERS UNMASKED by Henry Lee 掲載の挿絵"クラーケン"
昨夜NHKで放映された、世界で初めて泳ぐダイオウイカの撮影に成功したドキュメンタリー、見ました?
いやあ、面白かった。想像以上に目が怖いのね(昔のクラーケンのイラストでも、もっと目がかわいいな)なんて思ったりして楽しんだのですが、その一方で私は恐怖症の不安発作に襲われて難儀したのでその話をちょっと。
はじめに発作が起きたのは、潜水ポッドに乗ってイカジュースを撒いているシーン。
なにやら突然動悸がして心臓バクバク&目眩。直ぐに息苦しくなって、なんだろうとちょっと怖くなったんです。
そして気づいた。「このシーンは深海な上に小さな潜水艦じゃなイカ!(viaイカ娘)」
そう、私は暗所恐怖症と閉所恐怖症を併せ持っているんです。
だからこのシチュエーションは複合技で完全アウト。
驚いたのは、恐怖を感じる前に身体症状が先に出たこと。
以前は大抵恐怖が先、もしくは同時だったんですよね。
身体が先に反応するというのは、なかなか根深いんじゃないかしらと考えた時、今まで単純に幼児期のある体験に起因するとしていたのは違うなと思いました。
私の友人に先端恐怖症の子がいるのですが、彼女が一番怖いと感じるのはストローなんです。
「針とかの方が尖ってて怖そうなのに不思議だね」なんて話をしてたら、彼女は生まれた時に涙腺が詰まっていて、ストロー状のもので吸引されたことがあったと判明。
「それだったのかー!!」って大いに膝を打ったことがあっったのですが、私にもそういうのあるのかしら。
暗所&閉所恐怖症と簡単に言っても、怖い/怖くない状況が細かくあるんですよ。
一番苦手かつ悪夢でうなされることが多いのは、薄暗くて身体ギリギリ位に狭いトンネルみたいな所を潜る感じ。
あの身体の自由が利かない感じがものすごく怖くて息苦しくて、CTスキャンやMRI検査も苦痛。(検査の時、「狭い所大丈夫ですか?」と聞かれたので「ダメです」と答えたら「うーん…頑張って☆」とだけ言われて決行されたがあります。それだけかい!!)
映画などで見かける、水没したビルの向こう側へ行くために息を止めて急いで泳げ!とかも怖い。(泳ぐorゾンビに殺られるだったら、断然ゾンビに殺られます)
定番のエレベーターも苦手なので積極的には使わないけど、乗れないことはない。
夜寝る時も、もちろん電気は消しません。停電がものすごく怖いです。
でも、田舎の本当に暗い夜中の森とか、お墓とかは割りと大丈夫なんですよねー。
我ながら怖いポイントがよくわからない……。
ヘビが怖いとか、いや犬だとか、虫がダメとか、対生物に関する恐怖については、義母が興味深いことを言っていました。
曰く、その人が恐れる生物は、その人が産まれた時のお産で出た汚物(胎盤や血で汚れた布など)を埋めた地面の上を初めに通った生物であると。
汚物を土に埋める習慣のなくなった今では有効性がありませんが、民俗学的な薄暗さのある逸話で大好きです。
少なくとも義母の生まれ育った大分県では語り継がれている話だそうです。
その他では、人間に"近い"ロボットには不気味さと嫌悪感を抱くという『不気味の谷現象』なんてのも興味深いですよね。
読みたいなと思いつつ未読なんですが、フロイトは『不気味なもの』で、"かつて慣れ親しんだものが抑圧され、隠され、それがあらわになる時に不気味さを感じる"といったようなことを書いているそうで。
私の恐怖症は対象があるわけじゃないのでちょっと違うけど(そもそも不気味と恐怖とは異なるけど)、改めて読みたいなと思いました。
今回のような身体症状の出る恐怖は本当にダメだけど、怖いもの・不気味なものには魅力がある。
独特の吸引力で惹かれますよね。
個人個人の怖さのツボと理由と合わせて、その魅力と、OKな恐怖とNGな恐怖についてもあれこれ考えたくなりました。
私の場合、映画に例えるならどんなスプラッタでもOKだけど、『アビス』は絶対にNGです。笑
フロイト全集〈17〉1919‐1922年―不気味なもの、快原理の彼岸、集団心理学
- 作者: 須藤訓任,藤野寛
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