ギャンブルがギャンブルを見えづらくする?


Photo:Dollar Push Broom by Mark Wagner


私は宝くじすらギャンブル的に思えて買わないくらい興味がないのだけど、
昔、ホテルのバイトをしていた時、パチスロや競馬好きの人が周囲に沢山いました。
なまじ時給が良いから結構遊べた事も影響していたみたい。
以下はその頃のエピソードです。


とある男の子がある日、バイト先での食事時に
「明日、ハローワークに行くかパチスロに行くかで迷ってるんだ」と言い出した。
みんなはハローワークを勧めました。そりゃそうです。
すると彼は、テーブル上のクルクル回る調味料セットを指さして…

「これを回して、醤油が俺の方に来て止まったら明日ハローワークに行く」と。

私は「その決め方がそもそもギャンブルじゃん!」と笑いながらツッコんだのだけど、
彼にはその意味がわからなかったらしくキョトンとしていた。
ギャンブルに行くか否かをギャンブルで決めるとはコレ如何に。
ともあれ彼は、醤油のお告げに従って翌日はパチスロに行ったのでした。

彼は後に就職したのだけど、就職先は商品先物取引の営業。
「就職先もギャンブル関連か!」とみんなにツッコまれたのは言うまでもない。
バイト先に遊びに来た時にこぼしていたグチは多忙等ではなく、
「毎朝一番に「あれが上がりそうです!」とウソの電話をかけるのがツライ」でした。


またある男の子は、私が漫画家と(1回目の)結婚をする為バイトを完全に辞める時、
(当時会社員でしたがたまに土日などヘルプで行っていた)
「漫画家なんてギャンブルみたいなもんじゃん。
 俺がパチスロやってるのと変わらないよ」と言った。
私は、彼が漫画家という仕事の不安定さを心配してくれたのか、
はたまた何か他意があったのかわからず、
何よりその発言にビックリしちゃってスルーしたのだけれど…。

第一に、モノを生み出す仕事とギャンブルとは全く違うし、
仮にそういう言い方をするならばこの世にギャンブルでない仕事はない。
でも一番大きな違いは、パチスロパチスロ屋が儲かるようにできているから、
搾取されているのと同様という事。
だから、儲かる事があったとしても、遊びの枠を出ない。
ギャンブルを仕事にするならば、胴元にならなければ。
これってギャンブルの基本ですよね?

自身の行動を不確定なものに委ねる事のギャンブル性。
フリーランスの仕事とギャンブルを同様とする思考。
ひょっとしてギャンブルをやっていると、こういうギャンブルに関するシンプルな事が
わからなくなったり、見えにくくなったりするのかしら?と思いました。


…まあ、一人目の男の子に関しては単に"天然"かもしれません。
調味料に託す辺りも、先物の営業になって嘆く所も、
「覚悟なかったんかい!」って笑えちゃうし。
彼は早大文学部出身で、就職後に「本当は小説家になりたい」と言った事がある。
「どんなの書きたいの?」と聞いたら、「タイムスリップもの」と即答。
「いまどきタイムスリップもの!流行ったのいつだよ!」ってツッコまれていた。
「SF」と答えずに「タイムスリップもの」って答える辺りが、ポイント。笑